2025/08/06
・扇風機直風は、涙の蒸発を早めて角膜を傷つける可能性がある
・実験では「1分の直風」でも涙膜が不安定になる結果が出ている
・普通の使い方では心配しすぎる必要はないが、「長時間直風を浴びる」のは避けることが大切
夏になると欠かせない扇風機。最近ではハンディ扇風機もすっかり日常のアイテムになりました。
しかし「風を顔に当て続けると眼球が乾燥して角膜を傷つける危険がある」と聞くと、少し大げさに感じる方も多いかもしれません。
以下の記事で言及がありました。
携帯扇風機「正しく使って」 熱中症リスク、破裂や発火
https://www.47news.jp/13122682.html
風を顔に当てる=即座に目が乾燥して角膜に傷がつく、ということでもありませんが、しかし、実際に、角膜に傷がつく可能性があるのは事実です。
涙が目を守っている
角膜(黒目の表面)には血管がなく、涙膜という薄い涙の層がバリアの役割を果たしています。
涙膜は、乾燥や異物から目を守り、角膜の表面を滑らかに保ち、視力をクリアにする働きがあります。
そのため、涙膜が崩れてしまうと角膜が無防備にさらされ、小さな傷(角膜上皮障害)や炎症を起こす原因になり得ます。
ハンディ扇風機を使った実験
眼科医の有田玲子先生監修による実験(2022年発表)では、被験者3名に対して ハンディ扇風機を1分間、顔に直風で当て続けた ところ、全員「涙膜破壊時間(BUT: Tear film Break-Up Time)」が半分以下に短縮しました。
※BUTとは、まばたき後に涙膜が乾燥スポットを作るまでの時間のことです。
※健康な目なら10秒以上は安定していますが、5秒以下になると「ドライアイ」と診断される目安になります。
この実験では、たった1分の直風でも涙膜の安定性が失われたことが確認されました。
「眼球に風を当て続ける」状況は避けられる
ここで大事なのが、どのくらいの長さ当て続けたら傷がつくのかです。
普通に部屋で扇風機やエアコンを使っていても、風は顔全体に当たり、目にだけ集中することはまずありません。
寝ているときも、まぶたが閉じていれば角膜は守られています。
本当にリスクがあるのは、例えばこんな状況です。
- ハンディ扇風機を至近距離から長時間、顔に当てる
- 自転車や車で窓を開けて高速走行し、風が目に入り続ける
こう思うと、日常生活の中で「眼球に風を当て続ける」状況は、意図しない限りそう多くはないと言えますので、避けることが容易ではないかと思います。
風は夏の生活を快適にしてくれる大切な味方ですが、目に直撃し続ける環境は避ける。
これを覚えておくだけで、目の健康をぐっと守ることができます。