涼しい僕たちは扇風機を使う

レンタルのローム 扇風機の専門サイト。扇風機が生み出す風とカルチャーを探求しています。

体育館の暑さ対策は「最も暑い人」を基準にすべきだ

time 2026/02/05

体感温度という言葉がある。

同じ気温でも、風が当たれば涼しく感じ、湿度が高ければ暑く感じる。気温だけでは「暑さ」を語れない、というのは多くの人が実感しているところだろう。

だが、体感温度の議論で見落とされがちな要素がある。

「その人が何をしているか」だ。

同じ体育館にいても、暑さはまるで違う

夏の体育館を想像してほしい。

コートではバスケットボールの試合が行われている。選手たちは全力で走り、ジャンプし、ぶつかり合っている。一方、観客席では保護者や関係者が座って試合を見守っている。

同じ空間だ。気温も湿度も同じ。天井の高さも、窓の位置も同じ。

だが、暑さの感じ方はまるで違う。

選手は全身から汗が噴き出し、顔は真っ赤だ。観客は「暑いけど、まあ我慢できるかな」くらいかもしれない。この差はどこから来るのか。

活動量が体感温度を激変させる

答えは「代謝熱」にある。

人間の体は、安静時でも約80Wの熱を発生させている。これは白熱電球1個分くらいだ。しかし、激しい運動をすると、この数字は一気に跳ね上がる。全力でスポーツをしている場合、代謝熱は数百W——安静時の5倍から10倍に達することもある。

つまり、選手は自分の体の中に強力な暖房器具を抱えているようなものだ。

体は必死に冷却しようとする。大量の汗をかき、気化熱で体温を下げようとする。皮膚の血管を拡張させて、体表面から熱を逃がそうとする。だが、気温が高く湿度も高い体育館では、これらの冷却メカニズムが十分に機能しない。

観客席で座っている人は、代謝熱が低いぶん、同じ環境でもそこまで苦しくない。この「同じ空間にいるのに暑さが違う」という事実が、暑さ対策の設計を難しくしている。

「暑い」と言えない人がいる

もうひとつ、厄介な問題がある。

スポーツに夢中になっている人は、暑さを自覚しにくい。

試合中、選手の意識は目の前のプレーに集中している。ボールの行方、相手の動き、チームメイトとの連携——暑さに注意を向ける余裕がない。脳が「暑い」というシグナルを後回しにしてしまう。

これは精神論ではなく、生理学的な現象だ。集中状態では、体の不快感に対する感受性が低下する。だからこそ、「気づいたときにはもう遅い」というケースが起きる。選手が突然倒れる。それまで元気にプレーしていたのに。周囲は驚くが、体の内部ではとっくに危険な状態になっていたのだ。

観客は自分の暑さを自覚できる。「暑いから日陰に移ろう」「水を飲もう」と判断できる。だが、選手はその判断ができない状況に置かれている。

誰を基準に対策するか

ここで本題に入る。

体育館の暑さ対策を考えるとき、誰を基準にすべきか?

「室温28℃でエアコンを入れているから大丈夫」「扇風機を何台か回しているから問題ない」——こういった判断は、多くの場合、管理者や観客の感覚で行われている。座っている人が「まあ、このくらいなら」と感じる環境だ。

だが、それは「最も暑さに苦しんでいない人」の基準だ。

本来、基準にすべきは逆だ。その空間で最も暑さに苦しんでいる人——つまり、全力でスポーツをしている選手を基準にしなければならない。

観客が「涼しすぎる」くらいが、選手にはちょうどいい

選手を基準にした場合、どうなるか。

観客席の人が「ちょっと涼しいな」と感じるくらいの環境が、選手にとってはようやく「なんとかやれる」レベルだ。代謝熱が5倍以上あるのだから、当然そうなる。

もちろん、観客が寒くて体調を崩しては本末転倒だ。だが、夏場の体育館で「涼しすぎて困る」という事態は、現実にはまず起きない。むしろ、「対策しているつもりなのに選手が熱中症になる」ほうが、はるかによくあるケースだ。

暑さ対策の設計において、「過剰な涼しさ」を心配する必要はほとんどない。心配すべきは、「足りない涼しさ」のほうだ。

送風設備の配置を見直す

この考え方を具体的に落とし込むと、送風設備の配置が変わってくる。

コート側を優先する

大型扇風機やサーキュレーターを設置する場合、コートの周囲——つまり選手が活動するエリアに優先的に配置すべきだ。観客席にも風が届くに越したことはないが、優先順位は明確にコート側だ。

風速を上げる

体感温度は、風速1m/sで約1℃下がるといわれる。安静時の観客にとって風速2m/sの風は十分涼しいが、全力で運動している選手にとっては物足りない。選手のそばでは、できるだけ強い風を当てたい。ベンチ周り、タイムアウト時の休憩スペースには、直接風が届く環境を整えるべきだ。

休憩時間を風の中で

選手がプレー中に風を受けるのは難しい場面もある。コート上を走り回っているのだから、風の向きと一致しないことも多い。だからこそ、ハーフタイムやタイムアウトなどの休憩時間に、確実に風を浴びられる環境が重要だ。ベンチの正面に大型扇風機を据えるだけで、短時間で体感温度を大きく下げることができる。

軽量で持ち運びしやすい体育館向けの大型扇風機レンタルなら、ベンチ周りへの配置替えも容易だ。

WBGTだけでは足りない

暑さ対策の指標として、WBGT(暑さ指数)が広く使われている。これは気温、湿度、輻射熱を総合した指標で、「WBGT 28℃以上は厳重警戒」といったガイドラインが設けられている。

WBGTは優れた指標だが、ひとつ弱点がある。活動量を加味していないという点だ。

WBGT 25℃の環境でも、全力でスポーツをすれば熱中症になりうる。逆に、WBGT 30℃でも、安静に座っていれば直ちに危険ということはない。WBGTは「環境」の指標であって、「人」の指標ではない。

だからこそ、WBGTの数値だけで安心するのは危険だ。「WBGTは基準以下だが、選手は全力で動いている」という状況を、常に意識しておく必要がある。

まとめ

体感温度は、気温・湿度・風速だけで決まるものではない。「その人が何をしているか」によって、同じ空間でも暑さの感じ方はまるで違う。

  • スポーツをしている選手は、代謝熱が安静時の5〜10倍に達する
  • 集中状態では暑さを自覚しにくく、「気づいたときには手遅れ」になりうる
  • 暑さ対策は「最も暑い人」=選手を基準に設計すべきだ
  • 送風設備はコート側を優先し、休憩スペースに確実に風が届く配置にする
  • WBGTは環境の指標であり、活動量は加味されていない

体育館の暑さ対策は、観客が「涼しい」と感じるレベルではなく、選手が「なんとかやれる」と感じるレベルを目指すべきだ。

基準は、常に「最も暑い人」に合わせる。それが、最も”健康を考慮した”体育館環境をつくるための原則だ。

体育館の暑さ対策に、業務用 大型扇風機のレンタルという選択肢がある。

 

著者情報

すずぼく

すずぼく

コンテンツ責任者

扇風機のニッチでマニアックなサイトです。使い方、デザイン、歴史など、扇風機が生み出す風とカルチャーを探求しています。

扇風機を題材にした小説・エッセイ